「エトランゼのすべて」のごく一部について。

やたら評判のいい作家の森田季節の近刊「エトランゼのすべて」のごくごく一部について。


エトランゼのすべて (星海社FICTIONS)
森田 季節
講談社
売り上げランキング: 336232

単にイラストレーターからの続きです。
京都大学一回生の波乱に満ちた一年の物語。とはいえ、主人公は徹底的に傍観者である、後から来た人であり、部外者である。つまり読者と同じ情報量で、物語に接していく。それはいいとしよう。
最終的に救いようのない結びに至るとネタバレをしておくのだが、それにしても、肩透かしというか、そういう物語なのね、というか、エトランゼのすべて、とはつまり、読者のことではなくヒロインのことであったのかといろいろとおもうところがある(さらっとネタバレ)。

森田季節という作家は落語で言うクスグリの名人である。それもずいぶんと自虐臭がつよいクスグリである。その瞬間には自分を笑って欲しいと作者が表に出てきてるように感じる。それも実に自信があるのだがおくびにも出さずに一言だけ面白い事を言う。笑われると悦んでいるのだが、下を向いて顔を真っ赤にして悦んでいる風である。
ずいぶんとひねくれた作風だなと常々おもう。森田季節の最高傑作は「原点回帰ウォーカーズ」であるとおもうのだが、おそらくこういうひねくれた青春モノのほうが受ける人は多いのだろう。けど「原点回帰」は面白いよ!

と結局好きな本を薦めて終わる。