エアラインズヨーロッパ(承前)

ざっくりルールを説明したので思うところなど。

このゲームは株価が勝利点となる。路線を拡大し、株券を取得し、その株価を上げることで決算時に勝利点を得る。この株券は市場から選ぶのだが、毎回5枚がランダムで並べられる。唯一の勝利点の源がランダムでしか得られないところが、このゲームの雰囲気をやや緩いものにし、評価も緩くしているのだ。
似たゲームの「アクワイア」はビルタイルはランダムだが、手元に何枚かのタイルがあり、毎回その中から選ぶためランダム性を感じさせない。ましてや勝利点である金を得る源である株式市場はすべてが公開されており、また他人の所有数まで明確だ。そこにゆらぎというか、遊びは存在しない。手札と株式市場、ビルの建設をみて先の先まで読み通せるし、読めるような気持ちにさせる。
翻って「エアラインズヨーロッパ」ではなるほど先まで読めるのだが、いかんせん一番読みたい株式市場がまったく読めない。空路の拡張は自身の資金と相談なのだから完全に読みきれるだけに、その歯がゆさはゲーム中に呻いてしまうほどだ。相手に有利なように市場に株券が現れた時のやるせなさと言ったらない。
ただ、株式市場をゲーム化するのであれば、このようなプレイヤー以外にもプレイヤーが居るかのように感じさせることが必要だろう。同じく株式のゲーム「暗黒の金曜日」では株価がドラスティックに変化するのは完全にランダムである。そこに株式市場のままならさが再現されていて非常に面白い。ひいて「アクワイア」は世界に数人の資産家が己の思うままに経済を操っている感覚だろうか。選ばれし者達が血も涙もなく金で世界を動かしているのだ……!
その緩さが「エアラインズヨーロッパ」の良いところなのだけれど。投資とは期待であり、先のわからないものだと痛感できる。また自分だけが儲けられるものでもないということも。これまた「アクワイア」であれば合併時にはある種プレイヤー間での握手のような感覚もあったが「エアラインズヨーロッパ」では筆頭株主を取られたり、2位でうまく稼がれたりするととても悔しい。また「アクワイア」と異なり、一度取得された株券は二度と市場には出てこないところも悩ましいのだが……。
といったように投資のままならさ、株式市場のままならさ、を感じさせる良いゲームだ。「アクワイア」とこれ、どちらをプレイしたいかと聞かれれば、迷わず「暗黒の金曜日」をプレイしたいと答えたい。