ミスボド 20回の表

ボードゲーム会「ミスボド」第20回 「劇場版 魔法少女まどかマギカ[新編]叛逆の物語」に行った。愉しかった。20回にしてついにミステリから脱却である。もう何も怖くない。

プレイしたゲームはいくつかあれど、語りたいのはただ一つ。「箱庭の人狼」について、である。

満を持してのリプレイであるところの「箱庭の人狼」。少人数での本格的人狼が楽しめることがデザインコンセンプトの少々手の込んだ人狼ゲーム。国内ボードゲームショップで流通してるけれど、これでもまだ同人ゲームなんだろうか? 線引きは実に曖昧である。このゲームを人狼と呼ぶように。それは誰が決めるの? 君が決めるんだ。

今回は7人プレイ。箱庭人狼側初期カミングアウトは占い師*2、霊媒師*2。今から思えば、この時点で気づくべきことであるのだが、狼側は役職を拒否し潜伏している。これは経験者のプレイである。
これはメタ的な視点からの情報であるが、こういったところに気付くべきゲームでもある。このゲームで推理すべきは人狼側の行動的心理の足跡である。これは「不連続殺人事件」における巨勢博士の提案する探偵法と同位だ。また他の人狼ゲームと違い、このゲームでは人狼側は敗北を前提に行動ができることも要素として大きい。「箱庭の人狼」において人狼側は箱庭内の人狼ゲームで敗北をしても、その後のメタ人狼で最終的勝利を収めれば勝利条件を充足させるためである。大きなゲームでの勝利のために小さいゲームを「完全」に捨てることが選択肢として成立する。
端的に「完全なプレイ」と表現したが、昼間の議論の結果を読み切れば村人側の意図する展開を作り上げることが可能である。完全に村人として議論に参加し、夜の襲撃被害者の選択において、村人側の想定する行動をとることで、議論を操ることが可能であるし、今回のプレイではそうなったように思う。

この大きいゲームのための完全なゲームを行うことが人狼側勝利の要件となるように思う。箱庭人狼においてカミングアウトが強制されているため、狼候補は初日から暴露されているため、そこでの勝利はなかなかにむつかしい。だとするなら、大きいゲームでの勝利こそが人狼側が達成するべき目的となるのは当然だ。
その意味では人狼は「惨劇RoopeR」における脚本家のような技量が要求される。常に消去法で展開される推理において、次に提供する情報を決定する脚本家としての資質。村人側に完全ゲームをしていると錯覚させ、予定通りの勝利を与える。しかしそれが予定通りであるとは村人側に漏れるわけにはいかない。
人狼側が勝利のためにこなすべき役割は明確である。箱庭の人狼の外側のゲームのさらに外側に立ち、すべてを俯瞰するしか道は残されていない。その位置から完全なる人狼ゲームを提供すること。しつこいようだが、それこそが勝利の道程である。

今回は完全にそれにとってやられた。村人側の予定通りの吊りと襲撃だった。一日ごとに村人勝利に向かう箱庭人狼の手ごたえのため、その外側にいる人狼心理的足跡にまで思いをはせるべきであったが至らなかったことは至極残念だ。狂人の行動も巧みであった。最後のメタ人狼で狂人が自分自身を指さしたことは、見事な傑作ミステリを読んだような爽快感すら感じられた。ああ、やられた、そうなのかよ、と一瞬にして合点がいく。雑多な説明は不要で、ただ、狂人が己を指さす、その行動だけで、村人側の敗北と、人狼側の完全なプレイに気付かされたのだ! 実に鮮やかなる哉! なんたる不覚!

いまから次回のプレイが楽しみで仕方がない。これがプレイできただけで、今日一日がよい日であったと思えるほどに。

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