「超潜航学園デルファータ」がおもしろい

本について書こうとするとやはりブログがすぐれていると気付いたので、今後はここに。
今回は最近おもしろかった1冊「超潜航学園デルファータ」(餅月望 SD文庫)について。
この物語はSFだ。それも過ぎし日のSFだ。
急激な海面上昇によって陸地が水没してしまった未来の地球が舞台。謎の敵と戦う少年少女たちの暮らす学園都市が表題にもなっている超潜航学園デルファータである。正しくはマリューダが学園都市の名前で、デルファータは乗り込む超兵器の名前だが。
さて、一言でいえば「IS」コピーだ。超兵器デルファータはなぜか女性にしか操作適性がないのだが、主人公の少年はなぜか扱える。適性のある少女たちは中立都市に集められて暮らす、などなど。ライトノベルのテンプレートライブラリを見事に実装している。しかし、数ある「IS」コピーのなかで、本作を推す理由はただひとつ。
わたしが「小学星のプリセンス」が大好きだからだ。「小学星」はタイトルから想像する内容どおりなのだが、その元となっているのは「火星のプリンセス」デジャーソリスだ。デジャーソリスといえば武部本一郎により装丁画で誰もが知っている(強引)古典SFの名作だ。それを大胆にもラノベの文法をもって換骨奪胎し(以下省略)。
その後、同じ路線で迷っていた時期もあったのだけれど、今作「デルファータ」は話の背骨を外から持ってきたため、描写や使用する言葉などのその実装でいかんなく作家性を発揮できている。「すべすべの膝小僧」が何度も何度も出てくる。直截的な表現ではあるが、このこだわりはふともも作家として高名をはくす相沢沙呼に通じるこだわりを感じさせる。
挿絵も魅力的で、文章の魅力をさらに加速させる。とりわけ27ページのついにヒロインがその力を発揮するシーンでは、俯瞰からのパースで見事にその可憐さ、はかなさ、膝小僧のすべすべさを描き切っている。チューブトップのセパレートの水着で戦いに挑むヒロイン、白のハイソックス、黒のローファーと白黒イラストであるため、読者により輝きを見せることに成功している。ここに限らず挿絵についてはほしいところにちゃんとある呼吸のあった感覚が読んでいると心地よいのだ。
そしてこれらを支える縁の下の力持ちがデザインだ。青を基調としたカバーデザイン、その上へのロゴにわりつけ、袖のデザイン、もくじ、章始まりページのデザインなどなど、細かいところでSFらしさを演出している。読むわけではないが目に入るこれらデザインが整えられた雰囲気、一冊としての完成度を高くしている。ただ、ここまで丁寧な仕事でありながら腰帯の惹句、決め台詞などはあざとさが前面にでており、それが手に取る気持ちをくじかせていると判るために非常に残念だ。次からはちゃんとSFである旨を伝えてほしい。

ここ最近のラノベ読書の中ではとりわけ印象に残っている1冊だった。続きに期待したい。